インビザラインvs裏側矯正 矯正歯科医が教える使い分けかたとは・・?

よくある5つの疑問に答えながら、使い分け方を説明します

マウスピース矯正とワイヤー矯正の使い分けかたとは?

誰にも気づかれずに歯並びを直したい!そんな時に候補に挙がるのがマウスピース矯正の代表格”インビザライン”と歯の裏側に装置やワイヤーをつける”裏側矯正”です。
インビザライン専門医院を受診すればインビザラインを勧められ、裏側矯正専門医院を受診すれば裏側矯正を勧められることになるでしょう。
今回は、インビザラインも裏側矯正も両方行う矯正歯科医の立場から両者の使い分けかたを考えてみます。

1 どちらが気づかれにくいの・・?

インビザラインは”アタッチメント”というプラスチックの突起を歯の表面につけることが多いです。またマウスピースの透明なシート自体が、周りの人が良く見ればわかってしまいます。前歯だけでいえば、何もつけない裏側矯正のほうがよりナチュラルな状態でいられます。ただインビザラインのアタッチメントは無くす選択ができますし(予定通り歯が動かなくなる恐れはあります)、写真を撮るときなどはマウスピースを外すこともできます。その意味ではインビザラインも裏側矯正も見た目の大差はありません。
奥歯についていえば、特に抜歯を伴うケースの場合は、裏側矯正は奥歯の表側にも装置をつけることがよくあります。通常はほっぺたで隠れてしまいますが、大きく笑えば見えてしまいます。また、裏側矯正の装置は上を向いて笑ってしまうと見えてしまいます。

2 どちらが綺麗に仕上がるの・・?

抜歯を伴う矯正や難症例の場合、インビザラインで対応することは困難です。インビザラインで治療をする場合も、ワイヤーの矯正を併用することが多くなります。インビザラインは歯を抜いたスペースに向かって歯が倒れやすく、また奥歯と奥歯の間にマウスピースを挟むために奥歯の噛み合わせが甘くなりやすいという特徴があります。
インビザラインも適応症例を間違えなければ十分に綺麗な仕上がりを期待できます。ただ、インビザラインはマウスピースが納品された後はDr自身が自らの手で調整をする場面はほとんどありません。問題が無いかチェックしながら、ほとんど歯科衛生士が”渡すだけ”の状態になります。インビザライン治療が上手か下手かは、マウスピースをオーダーする前の”診査、診断”にほぼ全てがかかっているのです。インビザライン治療での歯の動き方の特徴、限界を理解し、いざとなればワイヤーを用いてリカバリーできる技量を持っていれば、インビザラインシステムの持つ力を最大限に発揮できると言えます。
裏側矯正は非常に技量の必要な治療法ですが、その都度起こる問題をその場で対処できます。いちいちアメリカにオーダーを出し、納品を待つ手間はありません。
ただ、裏側矯正の十分な臨床経験のある医院は非常に限られます。大学ではほとんど全く教育されておらず、また型だけとれればワイヤー矯正ができない一般歯科医でも導入可能なインビザラインに比べると、裏側矯正はハードルが高いのです。裏側矯正は診断能力に加え、毎度毎度のワイヤーの調整技量も高度な力が必要になりますが、難症例にも対応できることは裏側矯正の大きなメリットと言えます。

3 どちらが気持ち悪くないの・・?

裏側矯正は歯の裏側に装置が入るので、装置装着後の1ヶ月程度はしゃべりにくさや、舌の口内炎に悩まされることがあります。当院では患者様が訴える違和感を原因に裏側矯正の装置の撤去に至った経験はありませんが、装着感ではインビザラインのほうが上と言えます。いつでも取外せることもインビザラインのメリットです。

4 どちらが安いの・・?

ハーフリンガル(上だけ裏側矯正)とインビザラインの料金は80万円程度で大体同じ位です(東京都の場合。料金は医院により異なります)。ただ、インビザラインは総額制(トータルフィー)が多く、裏側矯正は調整料がかかることが多いので総額としては裏側矯正のほうが費用がかかります。裏側矯正は歯科医師がつきっきりになるので、歯科医院側の管理は大変になります。

5 どちらが早く終わるの・・?

歯の動くスピードは、適切な力をかける限りどのやり方をしても変わりません。ですが、インビザラインは時間が経てば経つほどマウスピースと歯の間のズレが目立ってきます。裏側矯正の場合はその場で直せますが、インビザラインではいちいちアメリカにオーダーを出す分の時間のロスが出ます。またインビザラインが苦手とする動きを行う場合は、一時的にワイヤーなどの違う装置を使うことがよくあり、インビザラインではそうした時間のロスも出やすいです。一般的にいえば、裏側矯正などのワイヤー矯正のほうが時間的なロスは出にくいと言えます。

おわりに

熟練した矯正歯科医が行うインビザライン治療であれば、インビザラインシステムの持つ力をフルに発揮して素晴らしい治療成果が期待できます。リカバリーのワイヤー矯正をできない一般歯科医院での治療はお勧めできません。一般的に難症例の場合は無理をせず裏側矯正などのワイヤー矯正を選んだほうが無難ではあります。裏側矯正は非常に熟練が必要な治療であり、患者様が一部の医院に集中する傾向があります。大学ではほとんど教育されていないので、裏側矯正の医院選びはより慎重に行う必要があります。

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