(完成時)上部構造装着前と後の画像(ボーンアンカードブリッジ)
今回はインプラントの下顎フルケース(ボーンアンカードブリッジ)です。
ストローマンインプラント使用して、下顎全顎にわたる固定式のブリッジを入れています。
当院では今回のような全顎のインプラントケースでは基本的に患者様ご自身で取り外し可能なタイプの義歯をお勧めしています。
理由は取り外し可能なタイプのほうが清掃性が良く、もし要介護の状態になった場合でも対処がしやすいからです。ですが今回は患者様の強い希望で下顎は固定式(術者可撤式)のブリッジ(ボーンアンカードブリッジ)となりました。
(完成時)上顎金属床総義歯
上顎は長年使っている金属床義歯をそのまま使いたいという患者様の強い希望がありましたので、最低限の修正だけ行いました。右側小臼歯部の人工歯が出すぎていたので、最低限臼歯部の人工歯だけは交換させてもらいました。
レントゲン(パノラマ)
術前と術後のレントゲン写真です。
下顎の初診時咬合面観と途中経過
下顎については左下1・3・5番が保存不能の状態で、現在のような天然歯支台のブリッジを新しく製作することはできない状態でした。
患者様は部分入れ歯を拒否されたので、下顎はインプラント支台のブリッジを入れる計画となりました。
今回の治療で重要な点は、下顎の全ての歯をいきなり全て抜歯せず、インプラントの手術を2回に分けたことです。手術は2回行う必要が出てしまいますが、この方法には下記のような様々なメリットがあります。
1)サージカルステント(インプラントを正確な位置に埋入するための器具)を天然歯に固定できるので正確性が大幅にUPすること。
2)治療途中に患者様が非常に安定しにくい粘膜支持の下顎総義歯を使わなくて済むこと。
3)下顎総義歯で圧迫されることによる骨造成の失敗やインプラントと骨との結合の失敗が起きにくいこと。
以上のお話は患者様にはややわかりにくい話ですが、インプラント治療を行う同業者ならそのメリットの大きさがよくわかる話だと思います。
仮歯とソフトウェア上の骨との重ね合わせ
上段の画像には仮歯が入っていますが、この仮歯には造影剤が入っています。
下段の画像には造影剤入りの仮歯と、口腔内を型どりした石膏模型をCT撮影して、ソフトウェア上で重ね合わせています。
現在は口腔内スキャナーがあるので、もっと簡単にこの作業が行えます。
右下臼歯部にはソフトウェア上でバーチャルな歯を設置しています。
サージカルステントと仮歯(インプラント支台)
上段は出来上がってきたサージカルステントです。
下段は、1回目のインプラント手術で埋入した3本のインプラントを支台とした仮歯の画像です。これをセットするのと同時に下顎の残存歯は抜歯します。その後、2回目のインプラント手術を行って残りの3本のインプラントを埋入します。
骨造成時の画像(外側性GBR)
インプラント手術時に行った骨造成時の画像です。やはりいくらシミュレーション通りに手術を行っても、インプラントフィクスチャー(金属のネジ部分)が露出してくることはあります。最初から骨造成はあるものと考えて対処しています。
完成したインプラント支台ボーンアンカードブリッジ
完成した下顎のボーンアンカードブリッジです。鋳造ではなく金属を削りだして作っています。昔鋳造で作っていたときは多数歯のインプラントブリッジを作ることは大変でした。浮きが出やすいので、部分的にセメント固定にして遊びをキャンセルするようにしていたこともあります。現在では金属を削りだすので、鋳造収縮による失敗は起きにくく、もし不適でも最小箇所を切断して再度レーザー固定する程度で済むようになりました。
リスク・・・・骨とインプラントの結合失敗
骨補填材の感染、再手術
インプラント周囲炎
費用・・・・・上下顎合わせて約300万円
治療期間・・・抜歯からブリッジセットまで約1年3ヶ月