裏側矯正のメリット2つ・デメリット3つ、矯正歯科医が詳しく教えます!

裏側矯正のメリット

1 見た目が良い

マウスピース矯正では前歯に何もつけないと思っている方も多いのですが、実際はインビザラインなどのマウスピース矯正では前歯に”アタッチメント”というプラスチックの装置を付けることが多いです。アタッチメントはコーヒーなどで変色してしまうことも多くあります。
裏側矯正の場合は前歯の表側に装置を付けることはほとんどありません。ただ歯の裏側が見えてしまうと、裏側矯正の装置が見えてしまいます。

2 治療できないものが少ない(適応症が広い)

インビザラインなどのマウスピースでは基本的に軽度の歯の凸凹などしか直せません。マウスピースでは骨の中の歯根まで動かすことが難しく、歯を上に出す動き(挺出)や、丸い歯の捻じれを直す動きは失敗することが多いです。歯を抜歯すると数ミリのスペースを作れますが、抜歯をするとマウスピース矯正単独で治療することは難しくなるので、多くのマウスピース矯正専門医院では奥歯の歯と歯の間まで沢山歯を削ってスペースを作ったりします。”マウスピース矯正でほとんどなんでも直せる”と宣伝している歯科医院もありますが、マウスピースは同じ工場から出来てくるので製品の性能はどれも一緒です。マウスピース矯正は完成品を歯科衛生士が渡しているだけで、ワイヤー矯正のように歯科医師が調整する場面は少ないです。もしうまくできることがあったとしても、例えば丸い歯の捻じれをワイヤー矯正ならほとんど100%直せますが、マウスピース矯正でうまくいく可能性は3割程度しかありません(※インビザライン治療とワイヤー矯正を組み合わせることができる医院でなら問題はありません)。
裏側矯正はインビザラインよりももっとずっと多くの不正咬合に対応できます。

裏側矯正のデメリット

1 裏側矯正を行える医院が少ない

マウスピース矯正専門医院の多くは表側矯正で治療を行う技術が無い歯科医師によって運営されています。表側矯正が十分にできる技量をもっているかどうかの一つの目安となる日本矯正歯科学会の認定医を取得できるのは大学卒業後、早くて6年目です。ワイヤー矯正は非常に難しく、若い名医というのは考えにくいです。マウスピース矯正は口腔内スキャンをして工場に送れば製品が出来上がってくるので、歯科医師側からすれば矯正治療を行うハードルは下がったのですが、本来はマウスピース矯正で対応できないものを無理にマウスピース矯正で治療を行うために、前歯だけでなく奥歯の歯と歯の間まで歯を削ったりするような無理な治療が横行しています。
裏側矯正は表側矯正よりもずっと難しく、日本矯正歯科学会の認定医を取得していても日常的に裏側矯正を行っている歯科医師は少ないです。非抜歯や上顎のみ左右4番抜歯ならまだ簡単な場合がありますが、上下左右4本の小臼歯を抜歯して上下顎裏側矯正で治療を行うのは非常に難易度が高いです。裏側矯正は大学病院ではほとんど行われておらず、矯正専門医の必須となる試験範囲には裏側矯正は含まれていないので、専門医だから対応できるというものでもありません。
裏側矯正の医院を探すには、歯科医師の経歴(認定医・専門医の有無や修行してきた場所など)や、上下裏側矯正で上下左右4本の小臼歯を抜歯して綺麗に仕上がった症例があるかどうか等を参考にすると良いでしょう(ハーフリンガルや小臼歯非抜歯・上顎のみ左右4番抜歯の症例は比較的簡単なので技術を評価するなら上下裏側矯正、4本抜歯の症例が良いです)。

2 治療費が高く、治療期間が長い

裏側矯正は表側矯正やインビザラインなどのマウスピース矯正と比較して約1.5~2倍程度の費用がかかります。上下裏側矯正が一番費用が高く、上顎のみ裏側・下顎は表側矯正(ハーフリンガル)のほうが料金は安いです。インビザラインでも対応可能な矯正治療を行う場合、治療期間は表側矯正が一番早く、インビザラインと裏側矯正は表側矯正と比較して約半年程度は期間が長くかかる傾向があります。裏側矯正やインビザラインは装置がオーダーメードなので装置を作るための期間が必要で、インビザラインの場合はさらにいちいち海外に製造依頼して届くのを待たないといけないので時間がかかります。
凸凹が直るのはワイヤー矯正のほうがほぼ確実に早いです。マウスピース矯正は1枚につき約0.25mm程度ずつ動かしますが、マウスピースからはみ出して動くことは無いです(ワイヤーはある意味歯が動く量に限界が無いです)。またマウスピースの中でも遊びがあるため、0.2~0.3mm、角度でいうと2~5度程度はオーバーコレクト(動かないことや後戻りを想定して予定より多く動かすように設計すること)が必要になることもあります。

3 歯ブラシがしにくい

歯ブラシのしやすさでいえば、マウスピース矯正の圧勝です。裏側矯正は表側矯正よりも歯ブラシはさらに難しくなります。では裏側矯正の患者様は虫歯が多くできやすいのでしょうか?じつは裏側矯正の患者様のほうが、表側矯正の患者様よりも虫歯になりにくいというデータがあります。理由は”唾液”にあります。むし歯は原因となる細菌が出す酸が2次的に歯を溶かすことで生じますが、唾液には“緩衝能”というものがあって酸を中和する働きがあります。裏側矯正のほうが歯ブラシ自体は難しいのですが、装置が唾液の循環がより多い場所にあるので虫歯がおきにくいと言われています。臨床的な実感としては、裏側矯正のほうが食べ物が装置にはさまっていることが多いですが、虫歯になるかならないかでいうと表側矯正とさほど変わらないという印象です。

結局、どうすればよい?

まずインビザラインにも裏側矯正にも対応できて、無資格のカウンセラーや歯科衛生士ではなく歯科医師(できれば矯正認定医・専門医)が初診相談に対応してくれる歯科医院を受診するのをお勧めします(※矯正認定医を取得していなくても高い技術をもつ歯科医師はいますが、患者様からはわかりにくいです)。インビザライン専門医院ではiTEROで完成した歯並びを披露するので、そのように並ぶかのように考えてしまいがちです。ただ実際のところは丸い歯のねじれを直すのは成功する可能性が低く、奥歯を2mm以上動かすような動きも失敗する可能性が高いです。
裏側矯正専門医院を受診すると、ごく簡単な症例でも裏側矯正で直すことになりますが、少々オーバースペックな可能性があります。もしマウスピースでも良いのであれば、もっと治療費を節約できるかもしれません。
マウスピース矯正の場合は1日20時間以上装着しないといけないので、使える自信の無い方は避けたほうが良いです。よくお客様と会食する機会のある営業の女性も、いちいち取り外しが難しいという理由で、敬遠される傾向があります。

●診療時間
平日:11:00~13:00 / 15:00~20:00
土日:10:00~13:00 / 14:30~17:30
※水・祝祭日休診

オペレーター
Contentsへ矢印