インプラント矯正とは?
2012年に日本でも薬事承認された矯正用インプラントは矯正の世界に革命を起こしたと言っても過言ではありません。
歯を動かすときに歯と歯の間にゴムをかけると両方の歯が動いてしまいます。矯正用インプラントがあれば、インプラントが絶対的な固定源として働くので、動かしたくない歯は動かさずに治療を行うことができるようになりました。矯正用インプラントのメリットについてはこちらをご覧ください(インプラント矯正のメリットとは?)
当院の矯正用インプラント埋入実績について
院長は矯正用インプラント埋入実績が5000本以上です!
国内で主要な矯正用インプラントを販売するプロシード社によると2023年1月時点で当院と国立院(新藤歯科)を含めた矯正用インプラント購入本数は5000本を超えており、これは国内開業医として2位の本数です。プロシード社によると国内でプロシード社が販売している矯正用インプラントを使用する施設が約6500施設、そのうち開業医で3000本を超えているのは数施設とのことです。オーラルデザイナー新宿デンタルクリニックはインプラント矯正について国内有数の豊富な治療実績を誇っています。
院長はインプラント専門医です!
院長の新藤は矯正専門医院の院長でありながら、日本口腔インプラント学会の専門医を取得しています。
矯正を専門とする歯科医師の半分位は麻酔すら行わないので、外科処置が苦手であることが多いです。
当院がインプラント矯正の分野で他の矯正専門医院に比べて多数の診療実績を残せているのは、インプラントも矯正治療も両方を得意とする院長が先頭に立って治療を行ってきたからです。 矯正のことをわかっているので、矯正をするために一番良い矯正用インプラントの埋入位置がわかります。
インプラントと外科の知識があるので、外科に慣れていない先生が埋入できない場所にでも矯正用インプラントを埋入できます。必要であれば、矯正用インプラントでは無く通常の補綴用インプラントを欠損部位に矯正用のアンカーもかねて埋入することもできます。
インプラント矯正のメリットとは?
1) 抜歯をしないで矯正できることが増えた
以前の矯正では抜歯をしないと直せないと言われていた矯正も、非抜歯で治療を行えることが増えました。
矯正用インプラントを使用して、奥歯を2~3mm移動させて、さらに側方拡大と歯と歯の間を削ることを併用すれば片側で約5mm程度のスペースを作れます。小臼歯の抜歯をすれば7~9mm程度のスペースが作れるので、やはり抜歯をした場合ほどのスペースを作ることはできませんが、矯正用インプラントの登場により抜歯か非抜歯かのボーダーケースを非抜歯で治療できるケースが増えました。
2) 外科以外の選択肢が増えた
顔の輪郭を変えるような治療は外科手術を行わないといけませんが、従来であれば手術でなければ治らないとされていたような骨格性の受け口や開咬の治療も、歯の部分であれば矯正用インプラントを使用してかなりの改善が図れるようになりました。
3) 違和感のある大きな装置を使う必要が無くなった
従来型の矯正のやり方では奥歯のアンカーを強くする方法として写真のような大きめの装置を使っていました。現在では矯正用インプラントを埋入することで、直径2.5mm程度の小さな突起が出る程度となり患者様の感じる違和感はかなり少なくなりました。
4) 今までできなかった歯の動きができるようになった
矯正用インプラントは絶対的な固定源です。しかもそれを十分な骨さえあれば自由な場所に設置できます。
矯正用インプラントの出現によって、矯正治療はまるでスーパーマンに助けてもらったかのように、従来ではできなかった歯の動きが可能になり、より確実により大きな量の歯の動きができるようになりました。
5) 裏側矯正ととても相性が良い
従来型の奥歯の加強装置を設置するところは裏側矯正のブラケットをつけるところと一緒なので、同じところに2つの装置をつけると異物感が強くなってしまいます。
矯正用インプラントを設置する場所は裏側矯正の装置をつけるところと少し離れているので、裏側矯正に矯正用インプラントを併用した場合でも異物感は少なくて済みます。
当院は矯正用インプラントを得意としているので、裏側矯正治療にとても役立っています。
インプラント矯正のデメリットと注意点
1) 抜けることがある
矯正用インプラントは通常の補綴用インプラントと違って、治療後に撤去しなければなりませんから、あまり骨とがっちりくっつくように設計されていません。
そのため、埋入する部位の状況などにもよりますが、2~30%程度は抜けてしまう可能性があります。
再度少し位置を変えて埋入すれば問題が無いケースが多いですが、それでも脱落してしまう場合には矯正用インプラントの使用を諦めるか、従来型の装置に切り替える必要があります。
2) 外科処置が必要になる
矯正用インプラントを埋入するのに、ほとんどの場合はメスによる切開などは必要ありません。麻酔が効いた後は埋入にかかる時間は1分もかかりません。埋入後の痛みも抜歯をした場合よりもずっと軽度です。
しかし、患者様の中にはどうしてもネジのようなものを打たれるのは嫌と言う患者様もいます。その場合は従来型の矯正治療で矯正治療を行います。
3) 粘膜の炎症をおこすことがある
矯正用インプラントを可動粘膜内に埋入した場合、粘膜に炎症を起こすことがあります。また下顎の奥歯の後ろに埋入した場合はほっぺたをはさんで咬んでしまい咬傷を作ってしまったり、上顎の奥歯の遠心頬側に埋入した場合には開閉時に下顎の筋突起に当たってきて痛みを生じる場合があります。
いずれの場合も、再度埋入位置や深度の変更を行うことで対応が可能な場合が多いです。
4) 歯根損傷、上顎洞炎、破折、誤嚥
歯根損傷はセルフドリルで埋入を行う場合に問題が生じる可能性はほぼありません。歯根間に、機械を用いて下穴を掘るようなやり方をした場合には歯根損傷の可能性はありますが、当院ではそうしたやり方はしていません。
矯正用インプラントによる上顎洞炎は、5000本以上埋入していますが当院では経験が無く、仮にあったとしても矯正用インプラントは容易に撤去できるので耳鼻科的な問題が無い限りは慢性的な炎症になる可能性は低いと考えられます。
インプラント体の破折は30N以上の力をかけると生じる可能性があります。歯根間でネジ切れてしまうと、外科になれていないと撤去は難しくなります。
誤嚥が生じた場合は腹部レントゲン撮影の後、気管支に落下が確認されたら内視鏡による撤去を行います。
当院のインプラント矯正の方針
なるべくシンプルに、患者様の経済的、身体的な負担を避けるのが基本方針です。
もう少し具体的に説明すると、外科的な侵襲がやや大きいプレート型インプラント(SMAP)の使用と、正中口蓋縫合部へのインプラントの埋入は基本的に避けています。正中口蓋縫合部への矯正用インプラントの埋入は現在のトレンドのようで、盛んに学会発表がなされていますが、必ず技工物が必要になるのが問題です。患者様の口腔内に装置が増えて違和感が生じやすく、また技工物の分の余分な料金が5万~30万程度は必要になってしまいます。
当院では外科的な侵襲は最低限にして、可能な限り矯正用インプラントから直接ゴムをかけ(直引き)、必要な場合に限って技工物を最小限に制作する方針をとっています。
インプラント矯正の料金
矯正用インプラント1本につき3万円の料金がかかります(困難加算)。
やろうとする矯正の難易度により、困難加算は増額する場合があります。 ただし、抜けてしまった分の補充などで費用が余分にかかることはありません。
先に当院の平均的な料金として表側矯正は約60万円、ハーフリンガルは約80万円、フルリンガルは約100万円と表記しましたが、この中には矯正用インプラント2本分程度の費用が既に含まれています(※矯正用インプラントを使わなかった場合の減額はありません)。
代表的な埋入部位とできること
奥歯の加強固定として
1) 上顎5・6番間頬側
抜歯を伴う表側矯正でもっとも多い代表的な使い方です。
特に上顎前突で奥歯に最大限の固定が欲しいとき、矯正用インプラントによって従来の装置ではできない絶対的な固定源を得ることができます。また片側の奥歯だけがやや手前に生えてしまっているときなど、右か左か片側だけの最大限の加強固定が可能になります。これも従来型の加強固定装置ではできなかったことです。
2) 上顎5・6番間口蓋側
抜歯を伴う裏側矯正で使います。これまで上顎6・7番間口蓋側に埋入するのがトレンドでしたが、上顎6・7番間に埋入すると上顎5・6番間に埋入するのに比べて10~20%程度脱落する率が高いと報告されています。
ゴムをかける位置がインプラントから近くなりすぎると歯に対して圧下の力が加わりやすいので注意が必要です。
奥歯や歯列全体の遠心移動用として
※遠心移動とは口の中で奥の方向への移動という意味です
3) 上顎5・6番間口蓋側
従来型の装置であるヘッドギアは、装置が大きて違和感が強く、また家にいる間に長時間の装着を強いる装置でした。患者様の協力度によっても結果が左右されました。
矯正用インプラントの登場により、患者様は大きな装置からは解放され、また歯科医師から見れば、患者様の協力度によって結果が左右されにくくなったことで治療が成功する確率が高まりました。
写真のような、矯正用インプラントとLA(リンガルアーチ)を併用するやり方は、表側矯正や裏側矯正で奥歯の遠心移動を行うときに最も確実性のあるやり方です。後述のように上顎7番遠心に矯正用インプラントを埋入できれば直接引っ張れるのでベストですが、上顎7番遠心部は骨が無かったり、柔らかすぎたりして、矯正用インプラントを入れるのが最も難しい場所です。
4) 上顎7番遠心舌側
裏側矯正で奥歯や歯列全体の遠心移動を行う場合に、この場所に矯正用インプラントを入れられるのがベストです。しかしこの部位には骨が少なく、かつ密度が低いです。矯正用インプラントを入れようとしても、麻酔針でのボーンサウンディング時に諦めるのが半分くらい、埋入を試みても約半分は初期固定がとれずグラついてしまいます。実際、この部位に矯正用インプラントを入れようと計画しても、実際にうまくいくのは3,4回に1回程度でしょうか。かなり熟練した術者であっても、この部位には最初からチャレンジしない歯科医もいます。
5) 上顎7番遠心頬側
上顎7番遠心頬側は上顎7番遠心舌側よりもさらに条件が厳しいです。骨が無いことに加えて、この部位は下顎の筋突起が当たってくるので配慮が必要です。
この部位にうまく入れられると、上顎大臼歯を圧下しながら遠心移動ができるので開咬の治療時には有利に働くときがあります。
6) 下顎7番遠心頬側
下顎の奥歯を遠心移動するときに使います。下顎前突の治療で下顎歯列全体を後ろに動かすときに使います。下顎大臼歯の遠心移動ができるようになったことで、大学に手術依頼を出す回数が減りました。また下顎の正中を合わせるためにも良く使います。
この部位は骨がとても硬いので、プレドリルが必要です。
埋入時にメスを使って歯肉を小さく切開剥離して骨膜下に矯正用インプラントを埋入する場合と、歯肉から出して埋入する場合の2通りあります。可動粘膜の範囲内で、咬んだときに上顎大臼歯と矯正用インプラントのヘッド部が近い場合には咬傷が生じやすいので、フラップを開けて埋入するほうが望ましいです。フラップを開けて埋入する場合は結紮線でリガチャーサークルを作り、切開した部位から輪っかが出るようにします。
圧下用として
※圧下とは地面にめり込ませる動きのことです
7) 上顎6・7番間頬舌側
上顎の奥歯を圧下するために有効です。大臼歯の過萌出に起因する開咬を治す際に有効です。注意するべき点としては、大臼歯部を圧下すると下顎のオートローテーションが起きるので、上顎前突を伴う開咬の治療のときにはとても有効ですが、下顎前突気味の場合には下顎大臼歯の遠心移動なども治療に組み込んでおく必要があります。
8) 上顎前歯部唇側
裏側矯正かみ合わせが深いが治らない、歯が内側を向いてしまった(トルクロス)場合のリカバリーとして有効なやり方です。表側矯正ではユーティリティアーチなどのワイヤーベンディングで対応できるので、このようなやり方を必要とすることはありません。